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ルイス・ハミルトン「We”ll keep the chatter down.」
ロシアGP、まずは2:55から始まるハミルトンの無線から紹介します。
出典 : First Lap Drama, Valtteri Bottas’ Win And The Best Team Radio | 2020 Russian Grand Prix
ポールポジションからスタートしたハミルトンですが、レース前にピットレーンでスタート練習をしたことから、レース10周目に10秒のタイム加算ペナルティを通達されます。
※2回スタート練習したため、その両方に5秒ずつのペナルティ。
通達されたハミルトンは「そんなのルールのどこに書いてあるんだ?」と不満を露わにします。
3位まで後退してしまったハミルトンですが、怒りは収まらず、22周目にチームからフェルスタッペンとのギャップを知らされますが、次のように答えます。
I don’t want any info anymore, Bono. It doesn’t make any difference.
出典 :First Lap Drama, Valtteri Bottas’ Win And The Best Team Radio | 2020 Russian Grand Prix
「ボノ(ハミルトン担当のエンジニア)、もう情報は一切いらない。そんなことしたって意味ないよ。」
珍しく(?)泣き言を放つハミルトンに対してチームが次のように言います。
Copy Lewis. We’ll keep the chatter down.
出典 :First Lap Drama, Valtteri Bottas’ Win And The Best Team Radio | 2020 Russian Grand Prix
「了解、ルイス。おしゃべりは控えるよ。」
お口チャック!「keep the chatter down」
「chatter」は「おしゃべり(の声)」という意味です。(「chat(チャット)」の名詞形ですね)
また、「keep ~ down」で「~を抑える」という意味になります。
つまり「keep the chatter down」というのは「おしゃべりの声を抑える・口数を減らす」です。
ハミルトンのエンジニアは、ハミルトンの怒りは収まらないとみてここは一歩引くことを決断したようです。
例 : Kawai-chan, you’re talking so much. Just keep the chatter down a little bit.
訳 : 川井ちゃん、喋りすぎだよ。少しだけお口チャックしてね。
ダニエル・リカルド「I’ll make up for it.」
31周目、リカルドの男前な無線。(3:20~)
出典 : First Lap Drama, Valtteri Bottas’ Win And The Best Team Radio | 2020 Russian Grand Prix
チームオーダーによりポジションをオコンから譲られるリカルドですが、オーバーテイクする際に一旦コースから4輪脱輪してしまいます。
ここで外側の印の外を通ってコースに復帰すればよかったのですが、そのままコース内に戻ってきてしまったリカルドは5秒のタイム加算ペナルティを受けます。
おそらく自分でもしくじったことに気づいていたリカルドは何とも潔い男前な発言をします。
OK. I’ll drive faster. (…) Yeah that’s my bad. I’ll make up forit.
出典 :First Lap Drama, Valtteri Bottas’ Win And The Best Team Radio | 2020 Russian Grand Prix
「オッケー。もっと速く走るよ。(…) うん、僕が悪いんだ。取り返してみせるよ。」
埋め合わせ・取り戻す「make up for」
「make up for ~(名詞)」で「~の埋め合わせをする、~を取り返す」といった意味になります。
今回のリカルドの場合は、ペナルティで失ってしまった5秒を取り戻すという意味で使われています。
例 : Redbull will make up for the Albon’s chance by putting him in DTM.
訳 : レッドブルはDTMに乗せることでアルボンの(失われた)チャンスの埋め合わせをする。
ピエール・ガスリー「Let’s give it a shot.」
レース終盤48周目、気合を入れるガスリーの無線。(4:18~)
出典 : First Lap Drama, Valtteri Bottas’ Win And The Best Team Radio | 2020 Russian Grand Prix
レース残り10周となった42周目にピットイン、新品のミディアムタイヤに履き替えたガスリー。
ポイント圏内まで順位を取り戻したら、まだタイヤの感触が良かったのかついでにファストストラップも狙います。
チームから現在のファステストラップのタイムを聞いたガスリーは無線で次のように発言します。
OK, think about it. Let’s give it a shot.
出典 :First Lap Drama, Valtteri Bottas’ Win And The Best Team Radio | 2020 Russian Grand Prix
ワンチャンいっちゃおうぜ!「give it a shot」
「give it a shot」は「試しにやってみる・一か八かやってみる」という意味です。
基本的には「try」と似たような表現ですが、さらにカジュアルです。個人的には「ワンチャンやろう!」くらいのノリだと考えるといいのかなと思ってます。
※ちなみに「give it a try」「give it a go」もほぼ同じ意味で使えますよ。
例 : 「Do you think I can buy a F1 team and put my son on the seat?」「Just give it a shot!」
訳 : 「F1チームを買収して息子にシートを与えることはできると思う?」「とにかくやってみなよ!」
バルテリ・ボッタス「To whom it may concern…」
最後はレース勝者、ボッタスのレース後の無線。(4:42~)
出典 : First Lap Drama, Valtteri Bottas’ Win And The Best Team Radio | 2020 Russian Grand Prix
ハミルトンのペナルティにも助けられる形となりましたが、見事勝利を収めたボッタス。
開幕戦でこそ優勝したもののそれからは良くて2番手と、勝利を重ねるチームメイトのハミルトンには見劣りしています。
そんな不調なボッタスにメディアからは批判のコメントが投げつけられていました。
ついに優勝したボッタスがメディアや批判をする人々に向けて強い言葉を送ります。
I mean, again it’s a nice moment to thank my critics. To whom it may concern… f*ck you!
出典 :First Lap Drama, Valtteri Bottas’ Win And The Best Team Radio | 2020 Russian Grand Prix
「また僕の批評家たちに感謝するには絶好の瞬間だね。関係者各位へ… くそくらえ!」
担当者様へ・関係者各位へ「To whom it may concern」
「To whom it may concern」を直訳すると「関係があるかもしれない方へ」となります。
実はこの表現はかなりフォーマルで、ビジネスにおけるメールや手紙のやり取りなどしか見られません。
日本語では「関係者各位」などとつけることがありますが、それと同等のものです。
主に、相手の人数が多い場合や相手の名前・名称が分からない場合には英語でもこの表現を使います。
ボッタスはあえて皮肉っぽく聞こえるように使ったのでしょう。よほど批判がウザかったんでしょうね…
※ボッタスは2019年の開幕戦オーストラリアGPでも全く同じ発言をして話題になりました。
例 : To whom it may concern, please penalize Mazepin for what he did.
訳 : 関係者各位へ、どうかマゼピンの行いを罰してください。