先週に引き続きバーレーンでの開催となったF1ですが、今週は初の「アウターレイアウト」でのレースでした。
ほぼ直線で構成され、予選でのラップタイムはF1史上最短となる53秒台を記録しました。レースでも波乱の展開が予想されていましたが、話題はそれだけにとどまらず…
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2020年F1サクヒールGP、レース展開まとめ
ラッセルへ初優勝の大きなチャンス!しかし….
ルイス・ハミルトンがコロナウイルスに感染し、サクヒールGPを欠場するため、ウィリアムズのジョージ・ラッセルが代役としてメルセデスのシートへ!(空いたウィリアムズのシートにはリザーブドライバーのジャック・エイトキンが座ることになりました)
F1デビュー後は予選で輝く走りを見せながらも、レースではマシンの性能差が大きくポイント獲得すらままならないラッセルにとって、これは本当の実力を世界へ知らしめる絶好のチャンスでした。
惜しくもボッタスに負け、予選2位となったラッセルは絶好のスタートを決め、ボッタスが出遅れたこともあり、終始トップを走行していました。
初優勝は確実と思われましたが、その快調な走りぶりはメルセデスのドタバタ劇と不運によって潰されてしまうのでした…
まず一つ目の試練。それはエイトキンが最終コーナーでクラッシュしたため、VSC(バーチャル・セーフティカー)が導入され、メルセデスはラッセル、ボッタスの順でダブルピットストップ(ダブルスタック)を試みます。しかし、連絡が十分うまくいっていなかったのか、ピットは大混乱!結局ラッセルにボッタス用のタイヤを履かせるという失態を犯してしまいました。
後方に落ち込んだラッセルはそれでも諦めまいと必死に追い上げます。しかし、そこで二つ目の試練がのしかかるのでした。トップを走るペレスに襲い掛かろうと追い上げていた残り10周地点、タイヤのスローパンクチャーで再びピットへ、初優勝の夢が目の前で消えてしまいました。
結局ラッセルは9番手でゴール、自身初のポイント獲得は何とも後味の悪いものになってしまいました。
カルロス・サインツ「He gave me a tow on purpose.」
36秒から始まる予選Q3の無線です。決勝はあと一歩で表彰台の4位と大健闘したサインツは、予選8番手とそれほどいい結果とは言えませんでした。(決勝は上位勢がいなくなってしまったことも助けとはなっていますが)
しかし、サインツは予選でラッセルから思わぬ“プレゼント”をもらっていたようです。
So if we repeated the same thing with George. I think he gave me a tow on purpose because I gave him one. So looks like we have a good relationship.
「ジョージがさっきと同じことを繰り返してくれたかもしれないね。彼はわざと僕にトウをくれたんだと思うよ。僕も彼に(トウ)をあげたからね。だから… 僕たちはなかなかいい関係みたいだね。」
「トウ」というのはスリップストリームに入って空気抵抗を減らすことですね。英語では「Tow」、直訳すると「牽引する」という意味です。つまり、空気抵抗が減って前の車に引っ張られる様子から「tow」と呼ぶようになりました。(日本語では以前からスリップストリームと呼ばれていましたが、最近では少しずつトウという言葉が一般的になってきた印象です。)
話が逸れましたが、今回の本題は「on purpose」です。高校英語でも習う一般的な慣用句ですが、意外と忘れがちなのではないでしょうか?
忘れてしまった人のために、「on purpose」は日本語で「わざと」「意図的に」といった意味になります。「purpose」は「目的」の意ですが、慣用句なので深く考えず「on purpose」は「わざと」と機械的に覚えておくと楽かもしれません。
僕もいつも「あれ、”on”だっけ?”for”だっけ?」なんて混乱することがあります。使い道がたくさんある慣用句なのでいつでも引き出しから出せるようにしておきましょう。
例 : There is a conspiracy that Jack Aitken crashed on purpose to hinder George Russell to win.
訳 : ジャック・エイトキンはジョージ・ラッセルの勝利を防ぐためにわざとクラッシュしたという説があります。
(この例はフィクションです。もちろんこんな陰謀論はありません。)
ジョージ・ラッセル「I bloody hope so!」
ボッタスのタイヤをラッセルに付ける重大なミスを犯したメルセデスとラッセルの無線です。動画では2:58から始まります。
ピットストップ前はトップを快走していたラッセルは、タイヤを付けなおすため二度目のピットに入り、順位を大きく落としてしまいます。ラッセルが「僕らは今2位なのか?」と聞くと、チームからは「今は5位だ。」との返答。
普通ならここで文句の一言や二言垂れてしまいますが、ラッセルはまだ前向き!「あと何周だ?」と聞きます。そんなポジティブなラッセルをチームは鼓舞します。
Laps remaining 24. Two four. So this should be a big tyre advantage.
「ラップは残り24周だ、24。だからタイヤはすごく有利だよ。」
それに対してラッセルが次のように返事をします。
I bloody hope so!
「マジでそうだと願うよ!」
「bloody」は文字通り「血まみれの」「残虐な」という意味ですが、実はイギリス英語特有のスラングでもあります。イギリス英語の最も代表的なスラングの一つで、イギリス人の真似をするときは絶対に入れるフレーズと言ってもいいでしょう。
スラングでの「bloody」は強調で用いる「f*cking」に似ていて、日本語で言うところの「クソ~だ」みたいなニュアンスです。強い言葉でカジュアルですが、「f*cking」ほど下品ではないようです。
元々は怒っているときや苛立っているときに使う言葉ですが、カジュアルに褒めるときに使うこともできます。それに関しては例で確認しましょう。
イギリスやオーストラリアの人は本当によく使う単語なので、覚えておくと混乱しないで済みますね!
例 : Perez’s drive was bloody awesome in Sakhir GP!
訳 : サクヒールGPでのペレスのドライブは”マジで”やばかったな!
ジョージ・ラッセル「I’m gutted!」
素晴らしいドライブをしていたにも関わらず、レース後半で最悪の展開となってしまったラッセルのレース後の無線から、一つ英会話表現を紹介します。
チームからは「残念だったね」と声を掛けられるも、悔しすぎるラッセルは何と言っていいか分からない… チームと一緒に仕事が出来て良かったとは伝えたものの、次のように答えます。
It’s been a pleasure and I’ve f*cking loved it. And honestly, I’m gutted. I’m absolutely gutted.
「(一緒に仕事をできて)光栄だったし、めちゃくちゃ楽しんだよ。だけど、正直言ってがっかりしたよ。本当にがっかりした。」
ここで注目する表現は「I’m gutted」、ここでは「がっかりした」という意味になります。「gut」は元々「はらわた」「動物の内臓」のことです。つまり、「はらわたを引き抜かれる程のショック」ということなので非常に強い落胆を表す言葉です。
まさにラッセルの気持ちにピッタリの表現と言わざるを得ないでしょう…
日本語でも「断腸の思い」という表現があるのでよく似ていますね!(Twitterのフォロワー様から教えていただいて気づきました(笑)いつでもコメントお待ちしてます!)
まとめ
ラッセルの悲劇、ペレスの初勝利、オコンの初表彰台など喜怒哀楽すべてが詰まったような週末でした。
それではまた次回の最終戦、アブダビGPでお会いしましょう!
明日・明後日と出来るだけたくさんの無線から表現を紹介していくのでお楽しみに!(Twitterで記事の更新は報告するので是非フォローもお願いします!)
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