近年はドライバーとチーム間の無線が公開されているため、我々ファンも極限の状態でバトルを繰り広げるドライバーたちの生の声を聴くことが出来ます。
ファンがより身近にレースの過酷さを感じられるように、公共放送(海外ならBBC, Sky Sports, 日本ならフジテレビやDAZN)でも無線の一部を放送しています。
しかし、時折無線の一部に「ピー」と自主規制音が入ることに気づく方も多いと思います。
これは放送禁止用語が含まれているためです。
つまり、興奮したドライバーが“悪い言葉”を使っているわけですが、いったいどんな言葉を発しているのか気になった方も多いでしょう。
実はピー音の下に隠れた言葉にはバリエーションがいくつかあるのですが、消されているのでそれに気がつくことは難しいのです。
本記事では、実際の無線を聞きながら、ピー音に隠されたいくつかの放送禁止用語をご紹介します!
どんな言葉が自主規制される?
一般的にピー音で消される言葉は攻撃的・極度に下品・不快な言葉です。
こういった言葉を総称して英語では「swear words」と言います。
「swear」には「誓う」という意味がありますが、カジュアルな用法で「ののしる」といった別の意味もあります。
「誓う」と「ののしる」ではまったく逆の意味ですが、英語には神様に関連する言葉をあえて悪い意味で使うことがあります。
文字を見ただけでは判断がつかないことも多いので、文脈で判断する必要があります。
日本語には「swear words」に相当する言葉が少ないので、どれほど強い言葉なのかイメージにしにくいかもしれません。
しかし、英語圏では非常に強力な意味を持った言葉なので、使い方を間違えると結構やばいことになります。
ネイティブは結構頻繁に使っているので、適当に使ってもいいと思うかもしれませんが、英語に慣れていないうちはあまりお勧めしません。
主な「swear words」一覧表
- Arse(Ass)
- Asshole
- Bastard
- Bitch
- Bullshit
- Crap
- Cunt
- Damn
- Prick
などなど他にもたくさんあります。
「Swear word」vs「Slur」
一般的に使用することがタブーとされている言葉にはswear wordの他に「slur」もあります。
何が違うのか線引きが難しいですが、辞書でそれぞれの意味を見てみましょう。
Swear word
a rude or offensive word, used, for example, to express anger
出典:Oxford Learner’s Dictionaries
「無礼で攻撃的な言葉。例として怒りを示すために用いられる」
Slur
an unfair remark about somebody/something that may damage other people’s opinion of them
出典:Oxford Learner’s Dictionaries
「誰か/何かの評判を損ねる可能性がある不公平な発言」
つまり、swear wordは誰か特定の相手に向けた、もしくは相手そのものを指すものではないことが多いのに対し、slurは相手をバカにしたり差別することを目的とした発言になります。
F1の世界でも、swear wordが問題になることは少ないですが、多様性を謳うF1はslurに対して厳しく取り締まりをしています。
slurは非常に攻撃的・差別的なので、レース中の無線でそもそも放送されないことがほとんどです。
※F1 TVではドライバーの無線が生で配信されているので、このような言葉もピー音なしで聞けます。
“ピー”音に隠された言葉を4つ紹介!
1. Fuck 【危険度 ★~★★★】
こちらはお馴染み、放送禁止用語の代表格です。
Fワードとも言われ、英語表現の中でも特に汚い言葉の一つです。
元々は「性行為」を意味する言葉ですが、罵声語としてよく使われていますね。
汚い言葉である反面、形容詞的に使う「fucking」は強調の意味で頻繁に使われます。
カジュアルな場面では使いやすいですが、くれぐれも場所と状況はわきまえましょう。
F1ドライバーも頻繁に口にする言葉ですが、日本語に相当する言葉がないので、日本語訳が難しい表現でもあります。
(例)怒りを形容詞形のFuckingで表す角田
(例)喜びをFuckで表現するノリス
2. Shit 【危険度 ★】
こちらも有名な罵声語ですね。
日本語でも何かミスした時やまずいことが起きると「クソっ」と言いますが、このshitも「大便」を意味します。
swear wordsの中でも社会的にも比較的許容されていて、ネイティブの人たちは割といつも発しています。
F1ドライバーもミスした時なんかによく口にしていますね。
(例)ひたすらShitを連発するグロージャン
3. Ass(hole), Arse 【危険度 ★】
「Ass」は「お尻」と言う意味ですが、ニュアンスとしては日本語の「ケツ」に近い軽い印象があります。
「hole」は「穴」なので、「Asshole」で「ケツの穴」となり、人をさしてつかった場合は「嫌な奴」という意味になります。
嫌いな奴をケツの穴と呼ぶのはあまり日本語ではないので、なんかおもしろいですね。
一応、放送時はピー音が入りますがそこまでタブーというわけではなさそうです。
アメリカ英語では「Ass」、イギリス(オーストラリア)英語では「Arse」とスペリングします。
※日本人が「地球(earth)」を”アース”と発音しますが、それだとケツの意味になってしますので”th”に音に気を付けて発音しましょう。
(例)FuckとAssholeを使いこなすフェルスタッペン
4. Cunt 【危険度 ★★★★★】
こちらは上3つに比べるとかなり強めの言葉です。
FuckのFワードに対して、こちらはCワードと言います。
本来「女性器」の意ですが、女性に向かって使うと「ヤリマン」になります。
イギリスやオーストラリアではアメリカよりも軽く使われるようで(特にオーストラリア)、相手が男女関わらず「嫌な奴」などの意味になることもあります。
使い方によっては差別的ではないものの、とてつもなく強烈な罵声語です。
少なくとも日本語には相当する単語が見当たらないですが…
このレベルになるとネイティブですら使うことはほとんどなくなります。
この単語が笑いごとで済まされることはほぼ確実にあり得ないので、使い方には十分気を付けてください。(というか使わない方がいい)
(例)ストロールをCuntと呼ぶノリス
日本語訳はありませんが聞き取れるか挑戦してみましょう!
※レース後にノリスはこの発言を謝罪しています。(それくらい強烈なワードだということを覚えておきましょう)
(例)ペレスをCワードで罵る角田
【まとめ】”ピー”音はドライバーが興奮している証
今回はF1ドライバーが発する放送禁止用語をいくつか紹介してみました。
もちろん他にもピー音の後ろに隠れているものはありますが、今回紹介したものがF1ドライバーがよく使う言葉なようです。
その多くが日本語には直訳できない英語独特の言葉です。
こういった言葉を学ぶことは英語圏の文化を学ぶ上でも重要ですし、彼らの考え方・価値観というものにもつながってきます。
反面、文化を十分に理解していない素人が使うと思わぬトラブルに発展する可能性があるので十分に気を付けましょう。
今度、無線でピーという音を聞いたらドライバーが興奮しているのだなと理解するのと同時に、その後ろに隠れている単語を予想してみると面白いかもしれません。
もし正解できればあなたも立派なイングリッシュスピーカーです!