前回の記事(Part1)を見ていない方はそちらも確認してみてください!
Part1では、F1には時代とともに大きな改革が必要、
つまり未来のパワートレインを載せればファンとメーカーは戻ってくる!
と、主張しました。
今回Part2では、次世代F1の心臓部となる可能性があるパワートレーンを紹介します。
市販車の動向から考える、「未来のパワートレーン」
皆さんご存じの通り、主力自動車メーカーはガソリンエンジンの廃止を目指しています。
環境問題・石油枯渇問題への対策です。
賛否両論はありますが、時代は脱ガソリンへ確実に進んでいます。
環境問題を解決する手段として、ガソリンエンジン以外の動力に切り替えようと自動車メーカーは動いています。
現状で、ガソリンエンジンの代わりとなるものは以下の通り。
- 電気(EV)
- 燃料電池(FCV)
- 水素エンジン
それぞれにメリット・デメリットがあります。
市販車では良くてもF1の環境には適さないものもあります。
次項からはこれに既存のハイブリッドシステムを加えた「未来のパワートレーン」の考察をしていきます。
「ハイブリッド」現行F1の延長でコスト削減・技術統一
ハイブリッドはエンジン+電気モーターで構成されます。
F1ではパワーユニット(以下、PU)と呼ばれています。
現行F1レギュレーションのPUは、V型6気筒1.6Lのエンジン+MGU-K+MGU-Hです。
MGU(Motor Generator Unit)はエネルギー回生システムです。
※MGU-K・・・ブレーキング時に運動エネルギー回生
※MGU-H・・・排気エネルギーで回すターボからエネルギー回生
今回は難しい話をするつもりはないので詳細は省きます。
つまり、現行のF1はエンジンと電気モーターを組み合わせて、それぞれのおいしいところだけを頂くシステムです。
それにより、エンジンの効率を高めガソリンの使用量を減らす目的です。
市販車の代表例は元祖ハイブリッド、プリウス(トヨタ)ですね。
市販車としては最高水準の燃費を誇ります。
メリット
- 技術としては後述の電気自動車や燃料電池車に比べて成熟している
- 電気自動車のデメリット(後述)をガソリンエンジンによって解決できる
- 若干の不満は残るものの、エンジン音はなくならない
デメリット
- 現状では最適解だが、将来的に淘汰されるのは免れないか?
- 現実的に見て、ガソリンエンジンの効率には限界がある
※メルセデスのPUで熱効率は50%を超えると言われているが、ここから先は至難の業 - 回生のマネジメントなど、システムが複雑になりがち
総合評価
将来性 | ![]() |
環境へのやさしさ | ![]() |
技術的難易度 | ![]() |
メーカー視点での魅力 | ![]() |
ファン視点での魅力 | ![]() |
F1は2026年まで現行ハイブリッドPUを継続するとのことです。
しかし、それ以降は他のパワートレーンに変わるべきではないかと考えています。
エンジン音はファンにとっては大きな魅力です。
しかし、市販車業界での縮小は免れず、より優れたパワートレーンの準備ができるまでの繋ぎという印象です。
「EV」市販車市場は最有力!しかし・・・

EVが今後数十年に渡り勢力を増すのはほぼ間違いないと考えてよいでしょう。
EVの是非に関しては多くの議論がありますが、モータースポーツ界でもEVを導入する動きは強いです。
Formula Eをはじめ、ラリークロスでもEVを導入しています。
F1ではどうでしょうか。
技術的には可能かもしれませんが、Formula Eとの住み分けが難しいでしょう。
市街地を走るFourmula Eには別の魅力がありますしファンも徐々に増えています。
結局はファンを取り合うことになり、お互いのメリットにはならないかもしれません
メリット
- 市販車との相関は大きい
つまり、メーカーにとって開発価値・イメージ向上の効果は大きい - 現在の技術力でも十分迫力のあるパワーが出せる
- 非常に高効率(90%以上)
デメリット
- Formula Eとファンを取り合うことになる
- バッテリーの耐久性能に関してはF1レベルで通用するかは疑問
- 充電に時間がかかる
高速充電や送電システムの開発が出来れば・・・ - エンジン音なし(従来ファンにはデメリットか)
総合評価
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技術的難易度 | ![]() |
メーカー視点での魅力 | ![]() |
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メーカーにとって参戦価値を見出しやすく技術開発も進んでいるEV。
しかし、Formula Eがあるので今後F1で導入される可能性は低いでしょう。
また、エンジン音がなく既存のF1ファンは魅力を感じないでしょう。
EVに関してはFormula Eに頑張ってもらうのが一番なのではないでしょうか。
「燃料電池」EVに次ぐ次世代パワートレーン
EVに多少の遅れはとっているものの、
同じく多くの自動車メーカーが開発に取り組んでいる燃料電池車(以下、FCV)。
電気を直接自動車のバッテリーに貯蓄するEVとは異なり、
水素を燃料として化学反応で電気を作り出すのがFCVです。
性質上貯めるのが困難な電気に比べ、水素は比較的簡単に貯蓄が可能と言われています。
航続距離を延ばせるため、市販車はもちろんトラックやバスなどにも採用されています。
EVの欠点である充電時間に相当する水素の充填時間も数分で可能です。
その点からもF1には向いていると言えます。
実際にFCVのモータースポーツカテゴリーも発足しており、WECでも将来的に採用するのではないかと言われています。
代表的な市販車はこれまたトヨタ、ミライです。
つい最近、2世代目を発表しましたが価格が高いのがネックですね。
メリット
- 充填時間が短いので従来通りのピットストップが可能
- エネルギー密度が高いので、少ない量で長い距離を走行可能
デメリット
- 燃料電池の効率は電池には劣る(最大60%ほど)
- 現状では石油を用いた水素生成が主流なので、ある意味本末転倒
- エンジン音なし
総合評価
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EVともに将来性は抜群でしょう。
メーカーにとって魅力的な要素は多いです。
水素は爆発などの危険性が指摘されることが多いですが、クラッシュ時には瞬時に拡散されることで火が付くことはほとんどないようです。
それでも、感覚的に抵抗感を持つ方が多いらしいですが、
モータースポーツでクラッシュ時に火がつかないことが証明できれば、
市販のFCVも安心して所有できる、いい証明になるのではないでしょうか。
「水素エンジン」夢のパワトレ?ロータリーエンジン復活も?
次世代パワートレーンというとEVやFCVに焦点が当たることが多いです。
実は、次世代エネルギーと言われる水素を使ったもう一つのパワートレーンがあります。
それが、「水素エンジン」です。
燃料電池で発電した電気をエネルギーとするFCVと異なり、
水素エンジンでは水素を爆発させてクランクシャフトを回します。
つまり、ガソリンの代わりに水素を使うわけです。
実はマツダが20年ほど前から開発しているエンジンです。
マツダが水素エンジンに注目しているのには訳があります。
それは、水素エンジンとロータリーエンジンの相性が極めていいためです。
詳細を説明すると長くなってしまうので省きますが、
水素の特性とロータリーエンジンの構造の相性がいいのです。
エンジン音もガソリンエンジンと同等で迫力も十分でしょう。
モータースポーツには打ってつけのパワートレーンなのではないでしょうか。
メリット
- FCVと同様、短い充填時間
- 高いエネルギー密度
- エンジン音
- ロータリーエンジンファン発狂
デメリット
- 効率はガソリンエンジン並みに低い(20~30%)
- 排気にNOx成分が混じる
- ガソリンエンジン同様構造は複雑になりやすい
- ロータリーエンジンのノウハウを持っているメーカーが少ない
総合評価
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環境へのやさしさ | ![]() |
技術的難易度 | ![]() |
メーカー視点での魅力 | ![]() |
ファン視点での魅力 | ![]() |
水素エンジンは既存のファンにとってはベストなソリューションとなるでしょう。
排気ガスに混じるNOxはリーンバーン技術で解決できる可能性があります。
すると、従来のエンジン音はそのままで比較的クリーンな最強のモータースポーツエンジンと言えます。
市販車での普及は効率の面などで難しいかもしれません。
しかし、F1が高効率の水素エンジンを開発する実験室となれば未来が切り開けるのではとも考えられます。
Part2の最後に
Part2では未来のパワートレーンに焦点を当てて解説しました。
技術開発の重要性とファン視点での魅了の両方を満たすのは難しいのがお分かりいただけたでしょう。
水素エンジンはファン視点では非常に魅力的ですが、どうしても市販車との関連が薄い印象です。
EVやFCVはメーカーも注目の技術ですが、F1の魅力を失う可能性があります。
自動車メーカーも未来の自動車がどうなるか予測ができない中、
F1もどこに進むのか迷っている状態なのでしょう。
あなたの未来のF1が進むべき道はどれでしょうか?
もし考えがあればコメントお願いします!
【おまけ】Twitterの投票結果!
あなたが考える未来のF1のパワートレーンはどれ?#f1jp #f1
— monda@もたすぽ (@motasupo_world) October 16, 2020
26票いただきました!投票ありがとうございます!
モータースポーツファンが多いので、やはり水素エンジンは人気ですね。
ちなみに僕はFCVに大きな将来性を感じています!
水素エンジンも魅力的なのですが、低い効率や複雑な構造の点で難しいのではないかと思います。